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(読了)読書感想文/儚い羊たちの祝宴

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<3行感想>

結末でひっくり返る短編5篇

ミステリの体裁だが全体的に漂うホラーで現実離れした雰囲気がたまらない。

最後はやや曖昧なラストで好みは分かれそう。

 

儚い羊たちの祝宴(新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴(新潮文庫)

  • 作者:米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/11/28
  • メディア: Kindle
 

 私はこれまで米澤氏の作品を読んだことがないと思っていたのですが、
以前に「春季限定いちごタルト事件」を読んだことがあることに気が付きました。
(他にも、氷菓インシテミルなどが有名です。私はどちらも読んだことがありませんが、、、)

春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)
 

 正直、同じ作者さんとは思えない作風の振れ幅です。

「春季限定~」は明るめの青春ミステリものだったと記憶しています。


「儚い羊~」はミステリの体裁をとってはいますが、トリックや謎解きよりも
じんわり染み出す恐怖、、、を楽しむ作品かなと思います。

 

<以下あらすじ>

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

 

5篇の作品、いずれも「名家のお嬢様と立派だけどどこか陰のあるお屋敷、その家に仕える(もしくは奉公人、あるいは料理人)」が核となって話が進みます。そしてどの作品も最後の1行で「どんでん返し」が仕込まれています。

 

しかし、似たような雰囲気でありながら決してワンパターン化することはなく、どの作品も新鮮な驚きをラストで味わうことができます。雰囲気は似ているのにラストの振れ幅というか、ベクトルが全然違うんですよね。

例えば

 

1作目「身内に不幸がありまして」のラストを読んだときの私の気持ち

→え、、、(^▽^;)

 

2作目「北の館の罪人」のラスト

→え(怖)

 

3作目「山荘秘聞」

→えw

 

、、、という感じです。わかりづらいですね。

この気持ち、きっと本書を読んでいただけたら分かっていただけるはず、、

 

なお私個人としては2作目「北の館の罪人」が一番好きです。ラストの「主人公」にせまりくる、じんわりにじみ出るような、絵の具の染みが広がっていくような恐怖感はたまらないですね。

 

(なお、ネットで他の方の感想を拝見すると、4作目「玉野五十鈴の誉れ」が特に評判がよいですね。わかります。この作品のラストの恐ろしさは群を抜いていました。

が、あまりに恐ろしすぎて私はこの4話目がちょっとトラウマです。
後味も最悪で、これだけは読み返したくない、、、)

 

なお5作目に関してはラストについては、いろんな解釈が可能だな、と感じるものでした。
、、、いわゆる「はっきりしない結末」というやつです。

個人的にはもっとわかりやすいオチがよかったな、、、と思うのですが、

これはこれで「バベルの会」の謎めいた雰囲気が保たれてよいのかもしれません。

 

最後に、この作品の魅力として、作品の核となる「女中さん」の働きぶりが非常に丁寧に描写されている点が挙げられるかと思います。(特に3作目)

富豪の邸宅を丁寧に掃除したり、料理を作ったり、必要な備品をそろえたり、、、丁寧な描写によって、なんだか自分がその豪邸に入り込んでしまったような、閉じ込められてしまったような、不思議な感覚を味わいました。

 

さて、次は何を読もうかな。