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(読了)読書感想文/ガセネッタ&シモネッタ

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日露の同時通訳で活躍された米原 万里氏のエッセイ集を読みました。

もし、あなたが同時通訳者だとして、現場で突然「他人のフンドシで相撲を取る」という表現が出てきたら、どう訳します?時間はないし、誤訳も困る。同時通訳は、次にどんな言葉が出てくるかわからない、スリル満点ストレス強烈な世界。そのストレス解消のため、国際化社会に欠かせない重職でありながら、同時通訳者の仕事には爆笑がつきもの。国際会議の舞台裏から、ロシアの小話や業界笑い話、柳瀬尚紀・永井愛氏との充実のコトバ対談まで、抱腹絶倒のエッセイ集!

 

抱腹絶倒のエッセイ集、とありましたが、笑える内容、というよりは
通訳業を通して得られる「気づき」に、へえ~~となる感じ。
(笑えるか、といわれるとそんなに笑える個所はないです)

 

 

 

通訳業ならではの視点 

同音異義語が多い日本語による、言葉遊びの通訳に苦労したり、
ダジャレにさんざん苦労させられるくせに
その一方で同時通訳者はダジャレが大好き

シモネタも大好き(万国共通で伝わるから!)

アメリカとソ連という、かつての2大大国において、
「言語に対するスタンスが真逆」だった興味深いエピソード

鉄のカーテンの由来

・日本での言語教育、外国語学習に対する政策への批判

 

などなど、なるほどと感じる部分がたくさんありました。

 

著者に対し、それなりの寛容さが求められる

例えば各言語に対して抱きがちな固定観念
(例:英語は曖昧な表現をしないからビジネス向き とか)
への批判をしつつ

その数ページ後には

「最もクソ面白くないのが英語通訳という人種である
(中略)ものの見方が通り一片の常識の枠を出ないのである」

 などと、書かれていたりして、「おい!!」と心の中で突っ込みました。

そこら辺、緩さがあるので、寛容な心で読みましょう。

 

3か国語以上を学ぶということ

ご本人が日ロ通訳だったこともあり、英語、
というか、「外国語=英語でしょ」という
多くの日本人の潜在意識に対する批判強めです。

日本語を知り、第1外国語(例 英語)を知り、
さらに第2外国語を学ぶことで
初めて各言語をフラットな視点で眺められる
と著者は述べています。

日本語話者が英語をちょっと学んだからと言って
「英語は比喩表現が少ないからビジネス向き!」
「日本語は比喩表現が他の言語より豊か!」
などと適当に語るなよ、ということでしょうか。

英語習得すら四苦八苦、第2外国語を大学でさらっと学んでおわりにした
自分にとっては耳の痛い話でしたw

 

市場経済について

市場経済に対しても筆者は批判的です。
ソ連社会主義計画経済をよく知る、著者ならではの視点かと。
近年ではロシアでも市場経済の広まりによって、
本屋からは純文学が消え去り、
売れる本
(雑誌、エンタメ性の高い推理小説、ハウツー本、ロマンスetc)
ばかりになってしまったことを嘆いています。

ただ、、、一方で社会主義計画経済下だと、そもそも
本が本屋にないんですよね。
マルクスレーニン共産党関係者の著作ばかり置いてあって、
ときどきわずかに入る文学書の新刊をみんな争うように買い求める様子」
本作にも描かれています。
(計画経済なので、売れれば売れるほど増刷、、、ともいかない)
これはこれで貧しい状況のでは、、、

私は、少なくとも本に関しては市場経済主義のほうがいいなあ、
と思いつつ、
純文学も(苦手だけど)定期的に読んでいかないとなあ、なんて
意識を戒めるようになりました。

(好きなものを好きなように食べられる国だからこそ、
ご飯とお肉ばっかりじゃなく、野菜も食べないといけない
ということかしら)

おしまい